妻の誕生日を祝いに青森まで。レンタカーで奥入瀬の手前の蔦温泉へ。そして十和田市現代美術館へ行く。この美術館、桜並木で彩られ、道路幅も広くてまっすぐな官庁通りという通り沿いに建っているんだけれども、かつてのような賑やかさは失われ、昨今空き地が目立ってきているらしい。省庁再編によって国の事務所の統廃合や合同庁舎整備に伴う出先機関の転居が主な原因。十和田市は、こうした空き地をアート拠点として活用し、国内外の人々に十和田市の魅力を伝えることに腐心しているようだね。確かに、奥入瀬渓流や十和田湖へ行く人はいても、地元の人以外はわざわざここまで来ることがなかったのではないかと思うからね。
今回、開館一周年記念ということもあり、常設展示作家の一人であるチェ・ジョンファの個展「チェ・ジョンファ OK! 展」が開催されていた。この美術館のシンボルとして認知されつつある「フラワーホース」も、チェ・ジョンファの作品。ちなみに何で馬かというと、かつてここは陸軍の軍馬補充部があったかららしい。Guggenheim Bilbaoの目の前にあるJeff Koonsの"Puppy"のように、街の人に親しまれると良いなと思いつつ。
で、企画展の話。チェ・ジョンファの作品を始めて見たのは横浜トリエンナーレの「フルーツツリー」なんだけれども、その時に感じた印象は、ものすごい大きな食品サンプルっていう感じだった。ただこの人、「アートって一体なんなんだ?」ということを考え続けた結果なのか分からないけれども、扱う素材の意味を持たせないためにか、バスケットやハンガーなどプラスチックやビニール製の日用品を多用しているのが大きな特徴みたい。美術館の外にある商店街の店の中にも、作品が点在しているので見て廻ると面白い。ただ、歩くと分かってくるけれども開館1年では未だ商店街に人を戻すほどの効果は出てないようだね。
そして常設展示。やはり群を抜いてインパクトがあるのが、一番初めに見ることになるRon Mueckの”Standing Woman”という作品。高さ4メートル近くある女性ながら、細部へのこだわりが際立っていて、例えば毛髪、皮膚の質感、老齢になるにつれて皮下からうっすら浮き上がる血管など、とにかくリアルに出来ている。天井の高い白い箱に、虚ろな女性が立ち尽くしている。ただ、現実世界の縮尺と異なることで、見る人に大きな不安を与えている。
帰りにRon Mueckの作品集を見て制作工程を知ったんだけれども、まずは小さめのモデルを作って、それを輪切りにして、算数で習った相似の計算式みたいに、拡張させてより大きなモデルを作るっぽい。その後、型を取ってシリコンか何かを流し込んで、型から外して、それに彩色をしたり、毛を植え込んだりしているみたい。ちなみにこの人、前は映画美術なんかをやっていたみたい。なっとくです。
その他には、キム・チャンギョムの「メモリー・イン・ザ・ミラー」も気になったよ。暗い部屋の壁、鏡・家具・水槽なんかが置かれているんだけれども、実際は白い箱や白い縁取りに、映像が投射されているだけという仕組み実際にそこに現実として存在するモノと、プロジェクターが生み出す虚像。その境目を行ったり来たりするのがまた面白い。このアイデア、授業でどうしても作品を作らなくちゃいけなくて、同じような仕組みを考えたことがあったよ、そういえば。「12人の怒れる男」っていう映画が大好きで、あとイッセー尾形の一人芝居が大好きで。で、この二つを組み合わせて、シチュエーションドラマみたいなものを作れないかなと思ったことがあって。ただ色んな役者を巻き込むお金もないし。だから誰かひとりだけ役者を巻き込んで、12人分をひとりで演じてもらうという考え方(むちゃくちゃw)。そして、それをそれぞれ撮影して、12体の白いマネキンに投影して、あたかも12人がそこで演じているかのように見せるっていうアイデア。映画みたいな舞台みたいなインスタレーションみたいな、そんな感じ。よく考えたら、世界のナベアツとかが巨大なディスプレーと掛け合うみたいなネタがあるけれど、それにちょっと似てるかもしれないね。ま、結局このアイデアは実現しなかったけどね(当たり前か)。
ここ1年くらいで地中美術館、金沢21世紀美術館、十和田市現代美術館、横須賀美術館と、地方にある美術館を廻ったけれども、財政難が続く地方美術館が多い中で、こういう美術館がどう事業を継続していくか非常に気になるところ。青森って、思っている以上に観光資源があるのに、なんていうかちゃんとブランディングできていないというか、県外の人に伝わってないよなあ。「青森=りんご」っていうところから脱却できていないというか、やはりもう少し分かりやすく青森の名物料理といえばコレっていうのが欲しいよね。食べるもの以外だったらBUNACOとかもっと押し出していけばいいのに。そうそう、その後の旅程はというと、奥入瀬渓流に行って、不老ふ死温泉に泊まって、白神山地行って。青森県立美術館は残念ながら休館だったので、また今度ということで。「旅は忘れ物をすると、また戻ってこれる」と、妻が言う。それって良い言葉だね。


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