photo by John Lewis Partnership
Siem Reapから帰国して福田首相が「あなたとは違う」と言い捨てて辞職しようとしていることを知って、正気非常に萎えてしまった。それは福田首相という人に対しての失望はもちろん、日本人の民意の低さに少し失望してしまったんだと思う。僕らは直接首相を選ぶことができないし、そのことについてとやかく言っても仕方がない。韓国みたいにキャンドルを持ってデモンストレーションしたり、タイみたいに首相府を占拠したり。もちろんそれが正しいかどうかは分からないけれども、最悪なのは何もしないということなんじゃないかと。
「かもしれない」っていうことを信じることから始まるんじゃないか。高校を卒業して、大学に入る為に予備校に入って学んだことがある。はっきりいって世界史や古文や現代文など、受験に必要と言われている勉強は全く身が入らなかった。それでも、唯一、僕が忘れられなかったのは、古文の先生で吉野という人が、「今がんばれなければ、一生がんばれない。今がんばれば、一生がんばれる"かもしれない"」という言葉を繰り返し説いていたこと。怠け癖がついていた受験生に喝を入れる為に、先生は言っていたことなのかもしれない。でも、その言葉は自分にとって、スラムダンクの安西先生じゃないけど、そこで諦めたら進むものも進まなくなるという風に感じとったわけだよね。
だいぶ遠回しな話になってしまったが、つまり僕はそれでも日本人というのは積極的に自国のことに関与したいと思っているかもしれないということを信じている部分がある。もっと言うと、積極的に身の回りの事について関与できる術がないということが問題なんだと思っている。
日本には、地域のソーシャルプロジェクトに寄付(あるいは投資)をする為のプラットフォームがあまりに少ないんじゃないか。なんで自分が多くの時間を過ごしている居住地や勤務地周辺の社会環境に関する問題に、こんなに疎いのかということ。それは一重に、その方法がないからじゃないか。だから寄付する者はある意味しかたなしにUNICEFや国境なき医師団に寄付しているのではないかと思っている。もちろん、UNICEFとかに寄付することを悪いと言っているのではない。ただ、地域住民に「気づき」を与え、社会環境に積極的に関与させるには、アフリカの開発問題よりも裏山にマンションが立つ事を阻止する事だとか、谷戸や里山とか地産地消とか、そこから始めることの方が、余程リアリティがあるんじゃないかと思うんだよね。
...と、ひとしきり書いていたら、ひとりで勝手に盛り上がってしまったが、何を書きたいかというと、地域のソーシャルプロジェクトへの関心を高め、さらにそのプロジェクトへの関与させる方法として「寄付することができる」という、面白いケースがあるので、そのことについて書きたいと思う(だいぶ前置きが長いね...)。
Waitroseという英国で展開しているスーパーマーケットが"Community Matters"という寄付プログラムを始めている。毎月、各支店に£1,000を寄付金として拠出しておいて、それを地元の福祉/コミュニティー/学校などに対して、買い物をした人の選択によって分配するプログラム。
具体的に言うと、買い物をした後に渡されるTokenを、3つの団体にそれぞれ割り当てられたPerspex tubes(透明なアクリル製の箱)の中から、関心がある(寄付したい)団体やプロジェクト1つを選んで、その箱にTokenを入れる。毎月末に、それぞれの団体にどれだけTokenが投じられたかを重さで計り、その重さの割合に応じて£1,000を分配する仕組み。3つの団体/プロジェクトは、お客さんによって選択され、最終的にはWaitroseの各地域のPartnerによって決定される。
英国の小売事情をざっと調べてみると、TESCO、ASDA、Sainsbury's、MORRISONS、Waitrose、Marks & Spencerなんかがある。TESCOは言わずとしれた巨大スーパーマーケットで、日本で言うところのイオンみたいな感じかしらね。一方Waitroseは、高所得者層をターゲットにした都市部を中心に展開しているスーパーマーケット。言うなれば成城石井みたいな感じか。
高所得者は高等教育を受けていることが多く、一般的に言って社会問題にも関心が高い。それが故に、こうした寄付プログラムは、Waitroseを利用する人の問題意識に刺さりやすく、結果的にWaitroseのブランドロイヤリティーを高めることにも繋がると思われる。
毎月£1,000ということは、日本円に換算すると19.2万円程度。年間で1店舗あたり230万円程度で、現在Waitroseは英国でおよそ200店舗展開しているので、全ての支店でこのプログラムを展開するとなると毎年4.6億円を買い物をした人によって地域の団体/プログラムに寄付されるということになる。
米国を中心に展開しているオーガニック&ナチュラルフーズ専門のWhole Foods Marketも"Wooden Nickel Program"という似たようなプログラムを展開している。これは買い物袋を持参するとWooden Nickelをもらうことができ、3つのNPOの中から選択して寄付することができる仕組み。Whole Foods Marketも高所得者をメインターゲットとしているスーパーマーケットなので、Waitroseと非常に似ている。
日本はどうかというと、イオンが「イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン」という似たようなプログラムを展開している。
毎月11日のイオン・デーに、地域のボランティア団体などの名前と活動内容を書いた投函BOXを店内に設置。買い物客がレジ精算時に受け取った黄色いレシートを、自分が応援したいと思う団体の投函BOXへ入れると、買い物の金額合計の1%が地域ボランティア団体などに希望する品物で寄贈される仕組み。寄付先の団体として登録するには、団体登録の申し込み書を実施店舗のサービスカウンターで提出し、店長や従業員のよる面接などによって決定される。
寄付先がイオンの各支店がある地域の団体などに特化している点、そして寄付先を買い物客が選択できる点は画期的。善し悪しはあるにせよ、イオンのような大きなスーパーマーケットは、地域住民がみんな買い物に行くようなところである。そういう場所において、買い物という日常的な行動の延長線上に、地域住民の関心が高い地域社会の問題について毎月繰り返し意識喚起する機会を作り、かつその問題について地域住民が直ぐに行動することができる仕組みを作っているのは巧い。2007年度は登録団体数が18,767、投稿レシート金額が約211億5,779万円、贈呈相当額が約2億1,306万円となっている。2006年度の実績と比較すると、贈呈相当額が1億円以上も増えている。
関与する方法が明確であれば、地域住民はもっと行動を起すかもしれない。これは、その「かもしえない」を実証する、大きな実験になると思う。