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    June 27, 2009

    現実と虚像の境目|十和田市現代美術館

    RonMueck

    妻の誕生日を祝いに青森まで。レンタカーで奥入瀬の手前の蔦温泉へ。そして十和田市現代美術館へ行く。この美術館、桜並木で彩られ、道路幅も広くてまっすぐな官庁通りという通り沿いに建っているんだけれども、かつてのような賑やかさは失われ、昨今空き地が目立ってきているらしい。省庁再編によって国の事務所の統廃合や合同庁舎整備に伴う出先機関の転居が主な原因。十和田市は、こうした空き地をアート拠点として活用し、国内外の人々に十和田市の魅力を伝えることに腐心しているようだね。確かに、奥入瀬渓流や十和田湖へ行く人はいても、地元の人以外はわざわざここまで来ることがなかったのではないかと思うからね。

    今回、開館一周年記念ということもあり、常設展示作家の一人であるチェ・ジョンファの個展「チェ・ジョンファ OK! 展」が開催されていた。この美術館のシンボルとして認知されつつある「フラワーホース」も、チェ・ジョンファの作品。ちなみに何で馬かというと、かつてここは陸軍の軍馬補充部があったかららしい。Guggenheim Bilbaoの目の前にあるJeff Koonsの"Puppy"のように、街の人に親しまれると良いなと思いつつ。

    で、企画展の話。チェ・ジョンファの作品を始めて見たのは横浜トリエンナーレの「フルーツツリー」なんだけれども、その時に感じた印象は、ものすごい大きな食品サンプルっていう感じだった。ただこの人、「アートって一体なんなんだ?」ということを考え続けた結果なのか分からないけれども、扱う素材の意味を持たせないためにか、バスケットやハンガーなどプラスチックやビニール製の日用品を多用しているのが大きな特徴みたい。美術館の外にある商店街の店の中にも、作品が点在しているので見て廻ると面白い。ただ、歩くと分かってくるけれども開館1年では未だ商店街に人を戻すほどの効果は出てないようだね。

    そして常設展示。やはり群を抜いてインパクトがあるのが、一番初めに見ることになるRon Mueckの”Standing Woman”という作品。高さ4メートル近くある女性ながら、細部へのこだわりが際立っていて、例えば毛髪、皮膚の質感、老齢になるにつれて皮下からうっすら浮き上がる血管など、とにかくリアルに出来ている。天井の高い白い箱に、虚ろな女性が立ち尽くしている。ただ、現実世界の縮尺と異なることで、見る人に大きな不安を与えている。

    帰りにRon Mueckの作品集を見て制作工程を知ったんだけれども、まずは小さめのモデルを作って、それを輪切りにして、算数で習った相似の計算式みたいに、拡張させてより大きなモデルを作るっぽい。その後、型を取ってシリコンか何かを流し込んで、型から外して、それに彩色をしたり、毛を植え込んだりしているみたい。ちなみにこの人、前は映画美術なんかをやっていたみたい。なっとくです。

    その他には、キム・チャンギョムの「メモリー・イン・ザ・ミラー」も気になったよ。暗い部屋の壁、鏡・家具・水槽なんかが置かれているんだけれども、実際は白い箱や白い縁取りに、映像が投射されているだけという仕組み実際にそこに現実として存在するモノと、プロジェクターが生み出す虚像。その境目を行ったり来たりするのがまた面白い。このアイデア、授業でどうしても作品を作らなくちゃいけなくて、同じような仕組みを考えたことがあったよ、そういえば。「12人の怒れる男」っていう映画が大好きで、あとイッセー尾形の一人芝居が大好きで。で、この二つを組み合わせて、シチュエーションドラマみたいなものを作れないかなと思ったことがあって。ただ色んな役者を巻き込むお金もないし。だから誰かひとりだけ役者を巻き込んで、12人分をひとりで演じてもらうという考え方(むちゃくちゃw)。そして、それをそれぞれ撮影して、12体の白いマネキンに投影して、あたかも12人がそこで演じているかのように見せるっていうアイデア。映画みたいな舞台みたいなインスタレーションみたいな、そんな感じ。よく考えたら、世界のナベアツとかが巨大なディスプレーと掛け合うみたいなネタがあるけれど、それにちょっと似てるかもしれないね。ま、結局このアイデアは実現しなかったけどね(当たり前か)。

    ここ1年くらいで地中美術館、金沢21世紀美術館、十和田市現代美術館、横須賀美術館と、地方にある美術館を廻ったけれども、財政難が続く地方美術館が多い中で、こういう美術館がどう事業を継続していくか非常に気になるところ。青森って、思っている以上に観光資源があるのに、なんていうかちゃんとブランディングできていないというか、県外の人に伝わってないよなあ。「青森=りんご」っていうところから脱却できていないというか、やはりもう少し分かりやすく青森の名物料理といえばコレっていうのが欲しいよね。食べるもの以外だったらBUNACOとかもっと押し出していけばいいのに。そうそう、その後の旅程はというと、奥入瀬渓流に行って、不老ふ死温泉に泊まって、白神山地行って。青森県立美術館は残念ながら休館だったので、また今度ということで。「旅は忘れ物をすると、また戻ってこれる」と、妻が言う。それって良い言葉だね。

    June 02, 2009

    何をしたかでなく、何のためにしたか | 劔岳 点の記

    004

    映画「劔岳 点の記」を見る。監督・撮影は、「八甲田山」「鉄道員(ぽっぽや)」などでカメラマンをやっていた木村大作。初監督作品。キャストは、浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮﨑あおい、仲村トオル、役所広司ら。原作は新田次郎の同名小説。

    撮影期間2年間。8割は山に実際にこもって撮影したという大作。キャストも本当に山を登っているっていうのはスゴいけど、機材を持って登っているスタッフにも脱帽。最小規模のスタッフで、いわば合宿状況での過酷な撮影。でも、だからこそ撮る事ができたシーンは、ものすごいリアルだし、さすがカメラマン出身の監督という感じ。

    明治時代、日本地図を完成させるため、命を賭けて前人未到の劔岳に登った測量手たちの話。黙々と任務を遂行しながらも、そのプロセスの中で命の危険にさらされながら、何のために山に登るのか、何のために地図を作るのかについて、苦悩していく柴崎芳太郎(浅野忠信)が非常に印象的。あとエンドロールも木村監督の本作にかける思いを感じさせる見逃せないところ(内緒)。映画の最後にこんな言葉が出てくるので引用。


    "何をしたかではなく、何のためにしたか"



    自分が満足しなければ何もならない。なんのためにやるのか。そんな信念や情熱を持ち続けること。いささか冗長的な印象もある剣岳の風景カットも、そうしたメッセージを反芻して、自問してみるにはちょうどいい、息継ぎのような時間かもしれない。

    6月20日に全国公開。

    April 17, 2009

    Magnetic Poster | WWF Brazil


    via イカすインターネット天国!

    久々のエントリーになってしまった。少しずつまたエントリーしていくとして、WWFがブラジルで展開しているポスター。このドネーションのやり方は面白い。貢献度の可視化っていうのは、やっぱり重要。

    March 14, 2009

    どうして僕たちは何かを失って、大人になるんだろう。 | ホノカアボーイ

    Honokaaboy
    映画「ホノカアボーイ」を見る。岡田将生、倍賞千恵子を中心に豪華なキャスト陣。脚本・プロデュースは電通のCMプランナー高崎卓馬。原作は吉田玲雄。一人の日本人青年がハワイ島の小さな村ホノカアの映画館で映写技師見習いとして過ごした日々を綴った同名エッセイ。予告編を見たとき「かもめ食堂」と同じ空気を感じたんだけれども、料理担当の高山なおみは「かもめ食堂」も担当していたようだね。なるほど。あと、「食」というキーワードで集まった映画とのタイアップCM(ごちそうさま委員会)も、電通がガッチリと入り込んだからこそ出来た企画かも。宣伝を担当する映画会社だけでは、ここまでキレイにネゴって営業できないと思うからね。あと日本人観光客の「ブログに載せよう」っていうあの件は、なんだかとってつけた感があるね(Amebaからタイアップフィーを貰う為に差し込んだのかな)。

    この映画の感想をある人と話をしたとき「何が良いの?」って言われたんだけれども、なるほどそういう見方も出来るかって思った。この映画、分かりやすいオチって別にない。そう、色々と曖昧。もし、本当に分かりやすい映画を追求したら、例えばビーが作る料理の鍋のカットをクローズアップさせたりするんじゃないかと。けれども、実際はそうじゃない。で、とても面白いなって思ったのは、高崎卓馬がキシリッシュのCMを作ったとき「面白みを十分表現するには、テレビCMのような15秒や30秒ではとても無理…」と読売新聞のインタビューで答えている点。2時間近くあれば、面白みはいくらだって表現できるだろうけれども、高崎卓馬が自ら語るように、大きな事件もお色気シーンもなく、色々と曖昧に作っているんだよね。つまり、余韻が面白いのであって、作品自体でお腹イッパイにさせないっていうかね。

    それにしても「ごちそうさま」って、確かに良い言葉だよなあ。日本人以外の人は、「ごちそうさま」の代わりに、どんな言葉を言って食事を締めくくるんだろうか。無言で席を離れるのかしら。だとしたら、ちょっと寂しいな。んー、気になる。「いただきます」も、英語でなんていうだろうか。

    March 06, 2009

    感覚を奪うことで感覚を取り戻すワークショップ | Dialogue in the Dark TOKYO

    Did09 Did0901

    今年も開催。そう、"Dialogue in the Dark TOKYO"のことです。「クラヤミ食堂」よりも、こっちが元祖かなと。ミュージカルや映画やテレビやゲームとはまったく異なるエンターテイメント領域。そして、視覚障害者が抱える課題に関する意識喚起しながらも、決して押し付けがましくない、そんなソーシャルイベント。このワークショップは僕がこれまで体験したワークショップの中で、最も画期的だし、最も心を揺さぶられました。可能であれば、色んな人に体験してもらいたいし、その手伝いをしたいと思う。ので、微力ながら、このブログで告知します。皆さん是非!



    "見えないから、見えるものがある。"



    人って、分かりやすいことにドンドン引き寄せられてしまう。だから「分からないということを分かる」、そんな機会があるのは貴重だと思う。個人的にちょっとやってみたいと思うのは、渋谷のセンター街や代々木公園など東京の街を目隠ししながら歩く、そんなワークショップ。調べてみるとリスボンでLisboa Sensorial"っていうツアーが展開されているらしい。これと同じこと、東京でもできないかな。



    過去のエントリー
    ・感覚を奪うことで感覚を取り戻す
    ・透明な鋳型

    February 28, 2009

    Corteo | Cirque du Soleil

    Uniqlo_meetscorteo

    ダイハツ コルテオ」の東京公演を見る。実は初めてシルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)。めちゃくちゃ失礼ながら、見るまでただのサーカスだと思っていました。他と比較することが出来ない、無二の舞台だと思います。スゴイ。パフォーマーがスゴイっていうのは勿論なんだけれども、衣装・メイク、そして円形型の舞台など、舞台美術がスゴイ。サーカスにシナリオがあるってこと自体にビックリしたし、何よりサーカスで「死」を表現するということ自体、常識を超えているよね。好きだったのは、文字通りベッドの上で飛び跳ねる"Bouncing Bed"という演目、フィナーレを飾る"Tournik" という鉄棒の演目。どれも、タイミングがズレたらぶつかってしまうので、チームワークがあってこそ。今回は招待されて行ったけれど、自腹でもまた行きたいです。そして日本初のレジデントショー「ZED」もチェック!早速UNIQLO MEETS CORTEOのScreensaverをセットしましたよw 




    ダイハツ コルテオ東京公演
    2009年2月4日(水)~5月5日(祝)



    February 19, 2009

    無料の「水」に対しチップを払う | TAP TOKYO by UNICEF

    Taptokyoproject

    レストランなどで提供される無料の「水」に対しチップを払うことで、衛生環境の悪い世界の子どもたちを支援する募金活動「TAP PROJECT」が3月に日本でも展開されるらしい。今年はアメリカ、日本のほか、カナダ、ニュージーランド、フィンランドでも実施される。参加する方法は簡単。2009年3月20日(金)、21(土)、22日(日)の3日間内に、TAP TOKYOに参加しているレストランへ行って、食事をする。その際、テーブルにサーブされた無料の水に、100円もしくはそれ以上の募金をするというもの。簡単なことです。

    もともとこのプロジェクトは、ユニセフが中心となって、国連が制定した「世界水の日」(3月22日)にニューヨークを中心とした全米46州のレストランで展開してきたキャンペーン。世界の5歳未満の子どものうち5人に1人が安全な水を使えない現状を知ってもらおうと、無料の水に対し1ドル以上の募金を呼びかける活動が反響を呼び、これまでに95万ドル以上の募金が集まったらしい。例えば100円あれば、1人の子どもが40日間、きれいな水を飲むことができる。

    日本では、日本ユニセフ協会と博報堂、「hakuhodo+design project」が協力し、3月20日~22日、リストランテ濱崎やToshi Yoroizukaなど都内と近郊のレストラン、カフェなど約200店舗で「TAP TOKYO」と題しキャンペーンを実施。米国での1ドルに対し、日本で募金額となるのは100円以上。日本で展開されるプロジェクトで寄せられた募金は、マダガスカル南東部の学校13校(児童総数は4000名)で、給水設備やトイレを設置するのに使用される。

    ニューヨーク、パリなどに匹敵する食の都であるトウキョウで、こういうプロジェクトが展開されることは、とても意味があることだなと思う。



    社会を変えるWebクリエイティブ | WebDesigning

    Webdesigning0903

    今月号のWebDesigningの特集「社会を変えるWebクリエイティブ」がとても面白い。Change.orgやKiva.org、Facebook Causesなど、個人的にもベンチマークにしているサービスが諸々と紹介されています。そして東大にいたときの研究テーマだったシリアスゲームに関しても、うまくまとまっているよ。やっぱり、こういうことを僕はやっていきたいと思った。マスメディアの中のインタラクティブメディア担当としては、多分今年もっとも大きな波が来ると思っていて。でも、そこでどういうことをすべきなのかっていうのは、実は何となく見えてきている気がしている。新しさという意味では、今年その感動を味わうことが出来ても、その後は焼き直しに過ぎないんだろうなと。もっとも、世の中に本当の意味で新しいというものは殆どなくて、既存のアイデアや人やグループとの組み合わせの妙、つまりケミストリーのオモシロさなんだと思っている。そしてそういう化学反応が必要な領域って、実は社会的な課題を解決する人やグループなんだと思う。give it up for Greenz.jp!

    February 18, 2009

    非銀行利用者層のためのモバイルマネー | Bill&Melinda Gates Foundation

    ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が携帯電話を活用した発展途上国向け金融サービスを支援するプログラム「非銀行利用者層のためのモバイルマネー(The Mobile Money for the Unbanked)」を発表。携帯電話事業者や銀行、マイクロファイナンス機関、政府開発機関と協力しながら、これまで銀行を利用していなかった層でも安い料金で利用できるモバイル金融サービスを普及させるという目的。

    助成金のうち500万ドルは、モバイルネットワーク事業者が新しいサービスを生み出すための支援に使われる。これまで銀行を使っていなかった途上国の2000万人に対して、2012年までにモバイル金融サービスを提供することを目標としていて、特にアフリカ、アジア、中南米を中心に、発展途上国で 20件のプロジェクトを支援する。

    確かに送金するにも銀行のアカウントを持っていないというケースがある中で、モバイルアカウントを使った金融サービスっていうニーズは非常に高いと思う。ケニアのSafaricomがやっているM-Pesaが最たる例。途上国で一番普及している社会インフラって、電気、水道、ガスなんかよりも、実は携帯電話だったりするからね。日本でも銀行法 改正によって、これまで銀行だけに認められていた国際送金などの為替取引業務を、銀行以外にも開放するという流れがあるよね。であれば、例えばカンボジアから日本に出稼ぎ労働者として来ている人が、カンボジアの地方の村に住んでいる家族に対して、携帯電話を使って海外送金することもできるようになるかもしれない。これまで銀行がやっていた送金サービスよりも手数料を安くすれば、こういうのって結構広がるかもしれないよね。

    いまISL社会イノベーションセンターで「モバイルを使って社会的課題を解決する」という壮大なテーマを自分が掲げてしまっているので、この辺のケースもちょいちょい追っていきたいところ。仕事が思った以上に忙しくなってきてしまって、正直両立させるのがめちゃくちゃ大変になっているんだけれどね... でも、がんばります。

    February 17, 2009

    the wall & the egg | Haruki Murakami

    仕事柄、元ネタになっている原作小説や原作コミックなんかを読まなくてはならないことが多い。なんて書いておきながら、実はそういう時間をなかなか作ることができず、結局は妻に読んでもらって、その要約や感想を後になって聞いていることが多いんだけれども。というより、小説を読むのが苦手なんです。それは、どの小説が面白いのかよく分からないというのと、小説って面白くなるまでの立ち上がりスピードがなんか遅くて、初期段階で結構苦しい思いをするっていうことがあって。そのくせ、読後感が悪いと、今までの時間を返せって思ったりしてね。

    でも、そんな自分も、村上春樹の小説だけは好きで、繰り返し読んだ。最初に読んだ本が「国境の南、太陽の西」で、この本は本当に何回読んだか分からない。Nat King Coleが大好きなので、レコードの話が出てくるところとか、だらしない男心とか、なんだか見透かされているようで、こうグイっと引き込まれてしまったんだよね。そんな村上作品。正直、何をもって「文学」っていうか分からないけれども、僕にとって村上春樹って完全にエンターテイメントでしかなくて、そんな難しい捉え方していなかったんだけれども、今回エルサレム賞を取るってことになったわけで。で、色々批判がある中で出席した村上春樹のスピーチ。名スピーチってこういうことだよね。


    We are all human beings, individuals, fragile eggs. We have no hope against the wall: it's too high, too dark, too cold. To fight the wall, we must join our souls together for warmth, strength. We must not let the system control us - create who we are. It is we who created the system.




    国境の南、太陽の西」が一番好きなんだけど、それ以外にも「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」っていう「カンガルー日和」に入っている短編も。「トニー滝谷」は映画も良かったし、今後「ノルウェーの森」も映画化されるってことで、どんな感じになるのか楽しみだね。